子どもは、１歳半頃から自我が現れ始め、自分で何でもやりたがるようになります。そして少しづつ、言うことを聞かなくなってゆきます。【イヤイヤ期】突入ですね。実は、このイヤイヤ期は、子どもの豊かな人格を創るための、人生で掛け替えのないチャンスでもあります。
子どもを躾（しつ）けるとき、「〇〇しなさい」とか「△△してはいけません」などと言いますね。子どもがその通りにしてくれたらいいですが、特にイヤイヤ期はなかなかそうはいきません。それが当たり前だからです。
その当たり前を理解せずに、大人は子どもを説得したり、叱ったり、ときには手を出したり力づくで言うことを聞かせることがあります。それは結局、子どもに寂しい思いをさせ、豊かな人格形成の邪魔をすることになります。
著者の保育園では、【叱らない保育】を実践しています。「叱らないで、どうやって躾（しつけ）をするの？」と疑問を持つことでしょう。当然です。
ときどき、あいさつしない我が子の頭を、上から押さえつけている親御さんを見かけます。我が子が、あいさつのできない部無礼者になっては困るのでそうしているのでしょう。子のように、今まで多くの親は、叱り、脅し、ときには手を出してまで子ども躾（しつ）けてきました。しかしこれは、躾けではなく　“調教”　です。ちゃんとした子に育てるために、お手やお座りを教えているのです。
【子どもは親のマネをする】という原理原則があります。お手やお座りを教えられた子は、将来、人にそれを教えるようになります。それでいいですか？
この本は、心理カウンセラーでもあり現場主義の保育園長が、子どもの心に関心を寄せるようなったストーリーと、約１５年にわたり延べ３００名以上の乳幼児との関わりの中から観察・洞察し見つけた、子どもの心の動きを、心理学に照らし合わせながら理解し、実践・検証した記録が中心になっています。ただのハウツー本ではない、親の心構え（在り方）にも触れています。
「イヤだイヤだ」と言って靴を履かない２歳の女の子に、お母さんは「履かないと帰れないよ」と何とか説得していますが、とうとう女の子は、怒って靴を投げてしまいました。
私（園長）は女の子に近づいて「どうしたの？自分で出したかったの？」と声を掛けました。「ん」と、小さな返事が。
女の子は、自分で下駄箱から靴を出したかったのに、お母さんがやっちゃったから怒っていたのです。
そのことに気づいてあげることを、多くの大人は忘れているようです。
こんなちょっとした出来事の中にも、子どもなりの物語があります。その物語を感じて、共有してあげることの大切さを、この本では綴っています。
そして、子どもなりの物語を共有してあげるために、具体的に、５つの魔法として並べてみました。
１つ目は「子どもは親のマネをする」という原理原則を利用した関わり方です。
２つ目は「子どもは、親の評価通りに育つ」という原理原則を利用した関わり方です。
３つ目は「言葉の大切さ」に焦点を当てました。
４つ目は「子どもなりの物語」への関わり方や心構えについて触れています。
５つ目は　すべての土台である「親子の親密な関係」を創るポイントを伝えています。
子どもは１０人十色、一人ひとり違います。親もそうですね、みんな１人ひとり違います。ただのハウツーやマニュアルではなく、１人ひとりに合ったやり方・在り方があります。それを一緒に見つけましょう。
この本は、あなたがそのチャンスをつかみ、親子が、在りのままの笑顔でいられることを目的に出版されました。そしてこの５つの魔法は、交流分析＝（対人関係を扱う心理学に１つ）がベースにあります。ですから、反抗期が終わっても、その後の子育て、さらには大人同士の人間関係にも応用することができます。
あなたの人生が、より幸多き人生になることを望んでいます。